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【イベント参加レポート】IBM Think 2025

投稿者:泉

こんにちは!D&A事業本部の泉です。

IBM社のGlobalイベント「Think 2025」に参加してきました。
本ブログでは、イベント期間中に発表されたIBM社の今後の戦略や最新情報についてレポートします。

Think 2025とは

「Think」は、世界中から5,000名を超えるお客様およびパートナー様が参加されるIBM社の年次イベントです。
2025年は、5月5日(月)から5月8日(木)までボストンで開催されており、日本からは235名のお客様とパートナーが参加しております。
今回のThink2025ではIBM CEO Arvindから、「エンタープライズAIの価値を最大化し、AIの構築・運用を効率化する事で自社AIの投資対効果を高め、ビジネスへの貢献を実現する事が重要」とメッセージがありました。このことから、IBMがエンタープライズAIを中核とした技術革新を通じて、顧客企業の成長を支援し、AI技術の実用性とビジネス価値を積極的に追求している姿勢がうかがえます。また、最新情報として「watsonx Orchestrateの新しいノーコード開発ツール等でAIエージェントの構築を効率化」、「 Graniteで30倍のコスパを実現」、「z17とLinuxONEの新しいAI半導体搭載」などが発表されております。

セッション内容

今回のThinkでは多岐にわたる内容が報告されましたが、それらを以下の5つの領域に分類してご紹介します。

1.Consulting(コンサルティング)
2.AI Productivity(AIによる生産性向上)
3.Data(データ活用)
4.Hybrid Cloud(ハイブリッドクラウド)
5.Automation(自動化)

1.Consulting(コンサルティング)

IBM社が毎年実施しているCEO向けアンケート調査(世界で2000人以上、日本ではおよそ100人を対象)によると、以下のような興味深い傾向が浮き彫りになっています。

60%が、既存業務への資金投入とイノベーションを推進する投資とのバランス維持に苦労していると回答。
55%が、わずか1年前には存在しなかったAI関連の職種を新たに採用していると回答。
60%のCEOがAIエージェントの積極的な採用および大規模導入の準備が整っていると回答。

これらの結果を踏まえてIBMでは以下5 つのマインドシフトを活性化することで危機における明確さを生み出し、組織の成長を加速させることができると紹介しております。

1.Make courage your core(「勇気」を中核に据える)
2.Embrace AI-fueled creative destruction(AIによる創造的破壊を受け入れる)
3.Cultivate a vibrant data environment(活気のあるデータ環境を作る)
4.Ignore FOMO,lean into ROI(FOMO:見逃すことへの恐怖よりも ROI を重視する)
5.Borrow the talent you can’t buy(自社で確保しきれない人材は外部から借りる)

<参考>
IBM 2025 CEO Study


また、IBMでは人事領域におけるAgentic AI活用事例としてAskHRを活用していることが紹介されました。AskHRとは一般的な人事業務における80通りのプロセスを自動化するIBMの対話型AI Agentであり、IBM社内で以下の大きな成果を上げております。

1150万回のインタラクション
110万タスクの自動化
94%の問い合わせに正しく対応

最後にOracle、Microsoft、Salesforce、AWSなど、多様なパートナーとの連携を更に拡大し、AIエージェントでの連携を進めることで、より強力なエコシステムを構築し、お客様に更なる価値を提供する方針が発表されております。

2.AI Productivity(AIによる生産性向上)

watsonx Orchestrateの拡張機能として以下の3つが発表されました。

①すぐ使えるエージェント(Pre-built Agents カタログ)
・セールス、調達、人事など業務に特化したエージェントが事前構築済み
・エージェントカタログにて随時、新しいPre-built Agentを提供
・パートナーエコシステムである「Agent Connect」を発表

②ノーコードで自作も可能(Agent Builder + ADK)
・業務ユーザーでもノーコードで数分以内にカスタムエージェントを構築可能
・Salesforceなど80以上の主要エンタープライズアプリと連携機能を提供
・開発者向けにはADK(Agent Development Kit)も提供され、プロコードにも対応

③複数エージェントの連携(Multi-agent Orchestration)
・各エージェントを統合・協調動作させ、複雑な業務プロセスを自動化
・複数エージェントを1つのチャットUIを通じて一元操作が可能


watsonx.aiについてはハイブリッドMoEアーキテクチャ(Mamba-2/Transformers)を採用し、推論スピードと効率の改善、および理論上無制限のコンテキスト長を実現したGranite4.0が発表されました。

Granite4.0の特徴
軽量:すべてのモデルが1B〜12Bのアクティブ・パラメータに収まる(7B〜120Bのトータル・パラメータ)
高速:同規模な競合モデルと比較して〜2.5倍高速な推論速度を実現
高コスト効率:小規模なモデルはラップトップで稼働可能、大規模なモデルでもシングルノードのGPUで稼働可能

また、watsonx.ai Model Gatewayが発表され、セキュリティが確保されたルーターを通じて、外部にホストされている最先端の3rd Partyモデル(OpenAIやClaude等)にアクセスできるようになることが発表されております。


更に、AIガバナンスについてはwatsonx.governanceでAI エージェントに対するガバナンス機能が発表されております。これによりAI エージェントに対するライフサイクル管理や性能評価を実現することが可能になっております。

3.Data(データ活用)

基調講演ではAIの活用がますます高度化する中、従来のように単独で利用するのではなく、企業のシステムや多様なコンテンツと連携し、高度なやり取りを実現する必要があることが指摘されました。また、それを支えるために、AIに適したデータ環境を整備する重要性についても強調されていました。

そんな中、データレイクハウスであるwatsonx.dataに以下2つの機能が提供されることが発表されております。
※以下の機能は必ずしもwatsonx.dataと一緒に使わなければならないということではなく、SnowflakeやDatabricksなどのソリューションと組み合わせて活用することが可能です。

1.watsonx.data integration:構造化データと非構造化データの統合、クレンジング等のパイプラインの作成をドラッグ&ドロップや対話形式で実現することが可能。

2.watsonx.data intelligence:データの来歴管理、品質管理等によりデータのガバナンスを強化、データ利活用を推進。


BIの領域ではwatsonx BIが発表されております。
watsonx.BIでは、従来のBIツールのようにエンジニアがレポートやダッシュボードを作成し、ユーザーがそれを閲覧するだけで終わりません。業務ユーザー自身が「こんなデータをこういった切り口で見たい」とチャットで入力することで、ニーズに応じたレポートやダッシュボードが自動的に作成されます。更に、その結果に対して追加の問い合わせを行うことで疑問を解消し、データから深い洞察を得ることが可能となっております。

4.Hybrid Cloud(ハイブリッドクラウド)

Hybrid Cloudの領域では、「Hybrid by Design」をキーワードに掲げ、意図をもってハイブリッド・アーキテクチャを設計し、お客様のデータやIT環境の現状に柔軟に対応する方針の発表がありました。

IBMは、インフラを以下の4つのカテゴリーに分類し、それぞれにおいて具体的な目標を掲げています。

1.Scale:GPU、メモリー、およびストレージの活用を最大化
2.FUSION:AIのための大規模データセットの効率的な管理と分析
3.AI on Z, Power, and LinuxOne:企業向けワークロードとデータにおけるAI
4.Cloud AI and GPUs:Alをサービスとして提供し、最も迅速に利用可能なプラットフォームとして提供します。

また、新しいLinuxOneであるLinuxONE Emperor 5が発表されました。
LinuxONE Emperor 5の特徴は以下の通りになります。

1.エンドツーエンドのサイバーセキュリティーとプライバシー保護
・機密データを保護するために設計されたコンテナ
・耐量子計算機暗号への対応

2.エネルギーとコストの削減を最適化したITソリューション
・ワークロードの統合によるエネルギーとスペースの節約
・業界トップクラスの可用性

3.より良い結果を実現するために設計された組み込み型AI
・最新のプロセッサであるTellum2とSpyre Acceleratorを有機的に組み合わせて、z上でのAI処理を実現
・エネルギー効率を最適化しならがAIを拡大

5.Automation(自動化)

AIを活用した自動化とハイブリットの自動化が何度もメッセージとして挙げられておりました。
その背景にはCloudやAIの活用は進んでいるが、まだ真の価値を得られている企業が少ないという統計があり、この課題を解決する上でハイブリッドな環境での戦略に基づき、AIや自動化を効果的に最適化していくことが重要なキーになることが強調されていました。

そんな中、新たな製品としてIBM webMethods Hybrid Integrationが発表されております。
IBM webMethods Hybrid Integrationでは昨年IBMが買収したwebMethodsの機能(ハイブリッドコントロールプレーンや業務フロー視点でのノーコード/ローコード開発)に加え、IBMが従来から提供しているMQやAppConnectといったソリューションも統合されています。この製品により、オンプレミス環境およびクラウド環境を一元的にデプロイできるほか、エンドツーエンドでの監視・管理が可能になります。

また、今年の3月にHashicorpの買収が完了しました。これからはアプリケーションのライフサイクル管理を最適化していく上でインフラ管理とセキュリティ管理を密接に連携する必要が有りますが、この2つの領域のキーとなる製品がHarshcorpが提供しているTerraformとVaultとなり、この2製品をIBMが提供しているIT運用管理製品やネットワーク系の管理製品と連携することで、より強固な自動化を実現するソリューションを提供することが可能になります。

最後に昨年発表されたIBM Concertの追加機能としてIBM Concert Resilience Posture の提供が発表されました。元々IBM Concertではレジリエンス(アプリケーションに問題発生した時にどれだけ迅速に回復できるかを表す能力)に問題がありそうな場合にコンソール上でWarningを出したり、その後アプリケーションでどういった問題が発生しているか、どう対応するべきかをAIを使用して把握することが可能になっております。そこから更にIBM Concert Resilience Postureの機能が追加されたことで、ノーコードで自動化のワークフローを作成することができ、その後のアクションを自動化することが可能になっております。

まとめ

Think 2025では、IBMがエンタープライズAIやハイブリッドクラウドを中核とした技術革新を通じて、顧客のビジネス価値を最大化し、新しい市場ニーズへの対応を進めていることが明確に示されました。特に私の担当している生成AI・AIエージェント関連のアップデート情報も多く発表されており、今後の業務に取り入れていければと思います。

来年の「Think2026」はラスベガスでの開催が予告されています。
今後も最新発表をBlogを通じて随時発信していければと思います。
ご覧いただき、ありがとうございました。

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